2017/02/20

高効率A級プッシュプル  T2パワーアンプの製作


このアンプのモデルはMOS FET出力段で好結果を得たT2トポロジーアンプです。

T2トポロジー原型動作モデル
この回路の2段目はHCA(ヤマハの言う双曲線変換アンプ)による電流位相反転回路になってます。
これらの出力電流はトランスリニアの原理上、決してゼロにはならないので、ノンカットオフ動作にさせる為に最適な終段デバイスは低い入力電圧でも動作する素子がベストになります。

そこで選んだのがラテラルMOSFETの2SK1056/2SJ160です。ラテラルMOSFETは市場に出た順番が早かったので旧型とよばれることがありますが、新型と呼ばれるスイッチング用MOSFETに劣るモノではありません。海外では依然根強い人気があります。

これらのFETのスレッショルド電圧は実測で0.4Vとバイポーラの0.7Vよりも低いので入力が低レベル迄オフにならず増幅作用があります。しかし、スイッチング用MOSFETの場合はこれが2V以上になり、それ以下の入力ではオフになるので高効率A級アンプには不向きです。

LTSPICEで構成したT2アンプに2SK1056と2SJ162(2SJ160の高耐圧版)の適当なデバイスモデルを導入して出力段の動作を調べると;
左;T2アンプ回路シミュレーション用 (実機とは少し違います)、右;終段の動作電流

出力段の電流が低レベルで湾曲しているのでバイアス0.6Aもあれば最大出力でもノンカットオフで動作します。そして、アンプのゲイン(出力電圧の入力電圧での微分)は全出力レベルにわたりフラットになっています。ですから、歪も少ない事が期待されます。

この回路図で、入力段の2SK170上下スタックはT2のオリジナルでは電流源として使ってましたが、真空管のようなSRPPにしました。
このSRPPの出力は共通エミッタに吸い込まれます。その時、上側の2SK170も積極的に動作するプッシュプルにしてるので2次歪のキャンセルと同時に電流ゲインを2倍にすることができてます。

終段に起用した2SK1056/2SJ160はGmが0.7程度と低いですが、オープンループゲインを大きくしない設計なので問題ありません。
また、ゲート側負荷抵抗も1KΩと少なめにして、高域迄レンジを拡大してます。
このMOSFETの温度特性はマイナスですがアンプに組み込んだ結果、総合温度特性ではわずかにプラスになったので、ヒートシンクに温度検出トランジスタを張り付けました。

そして出来あがったのがこれです。
Top view

Bottom view

前に作った2SK3497・2SJ618 AB級T2アンプをモディファイし組み込みました。終段用レギュレータつきです。

真ん中のヒートシンクには+/-20V CFBレギュレータが載ってます。ここに使っていたパワーMOSFETを排除して低出力インピーダンスを高域迄伸ばせるダーリントンパワートランジスタ2SB1647/2SD2560(IcMax 15A)に変更しました。又、前作で誤動作で悩みのタネであった過電流検出回路を除去しています。出力DCオフセット検出保護はそのまま入れてます。

さて実機で、本当に高効率A級になっているのかどうかはシミュレーションだけでは不十分なので直接終段電流を見る必要があります。
上;出力電圧
下;ソース電流(バイアスは0.6A; 波形の下側が丸くなっている)

最大出力時のX-Y表示
X軸;出力電圧(17Vp-p)
Y軸;ソース電流(バイアス 0.6A、2.2Aピーク)


見事に、出力段の電流がシミュレーションの様にカットオフにならずに常時オン状態をキープしA級で動作していることが確認できました。

特性の測定


方形波特性(100KHZ)

肩に少し丸みがありますがこれはオッシレータの波形もこんなもんですから、周波数特性としてはカットオフ1MHzを超えているのでしょう。(シミュレーションでは4.4Mhz)

歪率特性

歪は常用域で0.3%以下とまずまずです。

最大出力
歪特性から見て、A級18W/チャネル程度ですね。


ダンピングファクタ

出力インピーダンス1ΩでDF=8と低く、真空管アンプ並になりました。

消費電力

バイアスを0.6A/チャンネルにセットして両チャネルで62Wの消費電力でした。純A級だと80Wを超えるハズです。
レギュレータでのドロップと2SK1056/2sj160の飽和電圧が大きいのでパワーロスが増えています。

サウンド・インプレッション

試聴は100dbの高能率自作ホーンシステムと、Kenwood LSF555で行いました。
一聴して感じるのはナチュラルで素直な音であり、そして長く聴いていても疲れを感じないストレスフリーという印象です。
高域はよく伸びていてバイオリンやチェロなどの高音のニュアンスを描き分ける力を感じます。Sweetサウンドというのでしょうか、ラテラルMOSFETでよく言われるウオームトーンではなくシルキーな音です。
低中音もダンピングファクターが低いせいかたっぷり、ゆったりしています。
しかし、低能率スピーカを大音量で鳴らすと少し抑えきれてないような感じがします。
ま、とにかく私の所では1W=100db以上の音を出すことはないのでこれで良しとします。

にほんブログ村 PC家電ブログ オーディオへ
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿