2016/05/19

T2 アンプ(電流増幅、電流帰還アンプ)をAC解析してみる。

皆さま、この記事が、おかげさまで100本目になります。

駄文ではあってもユニークで役に立つ内容をと心掛けてやってまいりました。これまで読んで頂いた皆様に感謝いたします。

さて、100本記念に何を書くかということですが、これまでT2アンプとについて僅かばかりの解説と回路の紹介そして測定などを書いてきました.、しかし、より深いところの秘密は明かしてきませんでした。

今回はその辺について少し詳しく、分かりやすく書いてみたいと思います。

秘密とは。。。。。

このT2 MOSアンプはシンプルなれど実は高性能なのです。

この回路を見ると、普通;


  1. ゲインが低そうだからNFBが少ないのではないか、そして出力インピーダンスも歪も良くないだろう。
  2. ソース接地か、これでは出力インピーダンスは低くならないね。

などと感じる事でしょう。

しかし測定値をみたり、音を聴いたりすると どうもそうではなさそうだと思うハズです。

勘違いする理由は増幅や帰還の方式が電流増幅で電流帰還だからです。
同類のアンプ
ダイアモンドバッファ+エミッタ接地増幅

同類のアンプを例として挙げます。
ネット上にもよく出てるダイアモンドバッファを使った電流帰還型アンプです。出力にコンプリメンタリ・ソースフォロアをつけたパワー強化版もありますね。。

このアンプは実はT2アンプの前に作った習作でT2の前身になります。ダイアモンドバッファはまともに動作させようとすると多くの部品が必要なうえ、DC的にもAC的にも音的にも不充分だというのが分かったのがこれを解体し、新たにJFET1石バッファで充分なT2を創りました

ともあれ、こういう電流増幅で電流帰還アンプをSPICEを使って解析している例がネット上に見つからないので、実際にシミュレーションをして性能を確認してみましょう。

その前に、電流増幅・電流帰還アンプの基本モデル図を下に示します。(お手本はありませんので、オリジナルなので間違いがあるかもしれませんよ。)


このモデルの動作は単純で、最初に入力電圧を電流に変換してからトランス・インピーダンスにより電圧に再変換する。

そして言えることは
  • AZが非常に大きいとクローズド・トランスインピーダンスは抵抗の値で決定されるようになる。>>Rf+Rs
  • 入力の電圧電流変換部分はNFBの外側になっていて無帰還である。(注;T2では、初段もNFBループの中に入っており、V-I変換が低歪になる)
  • ソース抵抗、Rsは電圧電流変換用でありNFB抵抗ではない。(電流帰還の解説でNF抵抗としているのは間違いである)
  • NFB抵抗はRfのみである。
ということです。

では実際にT2アンプをまな板に載せてこのモデルに当てはめて、主要パラメータを求めてみましょう。
電流センサー等を挿入。

LTSPICEで電流を測るには通常のプローブを当てるだけでは無理なので、電圧がゼロの電圧源を回路を切って挿入します。この方法は回路動作解析に一切影響を与えません。

入れる場所は;

  • 初段ソースとSum(Summing Point;加算点)の間
  • 初段ソース抵抗R16とSum、
  • そして出力のOutと終段MOSFET上下のドレイン合流点との間です。

出力にぶら下げたI1は出力インピーダンス測定の為で、後で使いますので最初はAC電流はゼロにしときます。

ゲインとNFB(電流ゲインと電流帰還量)

入力のAC電圧源に1Vを入れてAC解析を適当な周波数帯域(テツは通常1-0.1G、1Hzから100MHz)でRunさせます。


測定するパラメータの計算式は次の通り。


  • オープンループのAC電流ゲイン;       I(V2)/(IV7)
  • オープンループのトランス・インピーダンス;V(out)/I(V7)
  • クローズドループのトランスインピーダンス;V(out)/I(V6)
これらの計算はGraphの中で計算式を入れて行わせます。

で出力されるのが


このようなグラフです。

読み取ると、


  • 電流ゲインは4600倍 (fc、101KHz) 、このゲインの全ては終段MOSFETのゲート抵抗と相互コンダクタンスの1段で稼ぎだされます。電圧による増幅方法だと1段でこれだけ稼ぐことは困難ですが電流の増幅だとバイポーラトランジスタでも100-数百倍程度になるしパワーMOSだと数千倍は可能です。
  • オープン・トランスインピーダンスは36.2KΩ (fc、101KHz) 上記、電流ゲインと負荷インピーダンス(スピーカ;8Ω)の積                  
  • クローズド・トランスインピーダンスは  348Ω (fc、 11.4MHz) フィードバック抵抗のR15+電流変換抵抗R16の値
となりました。

NFB量はオープンとクローズのトランスインピーダンスの割合(Dbだと差)なので
  • 電流帰還量 NFB 40.3db
NFBの結果ゲインが下がり、帯域が大幅に拡大している(11MHz!)のが確認されました。また歪も相応に減少しているはずです。

注目点はこのNFB後のクローズドインピーダンスカーブが高域カットオフ以降素直に下降していることです。

シミュレーション上とはいえ10MHzまでピーク無しに帯域を伸ばすのは甚だ困難であり、これもオープンループでの特性がポールが1個だけというのがこのT2トポロジーの強みです。

実測でも手持ちオーディオアナライザの周波数測定限界を超えてます。

次に、他のアンプとの比較で重要な電圧ゲインは

  • 出力電圧=電圧電流変換xクローズド・トランスインピーダンスより 
   電圧ゲイン=348/22
          =15.8倍
となります。(計算値は16倍)

電圧ゲインの周波数特性は3.69Mhz(-3db)となっておりクローズド・トランスインピーダンスの11.4Mhzより狭くなっています。
これは初段入力で形成されるJFETの入力容量と抵抗により形成されるLPFによる制限です。

出力インピーダンス

アンプ入力のAC電圧源をゼロにし出力のAC電流源を1AにしてAC解析します。

出力インピーダンスはV(out)/I(i1)で計算されます。

出力インピーダンス

出力インピーダンスは0.2Ωで100KHzまでフラットになっています。
この100KHz程度という値は?
そうです、電流ゲインのカットオフ周波数です。大きな電流ゲインが出力ンピーダンスを下げてます。

ダンピングファクタはこれから計算すると40と合格ラインにあります。

なお、電流ゲインは大きいので実測が困難ですが出力インピーダンスを測定すればポールの位置などを容易に測定できるはずです。そのうちTRYしてみます。

まとめ
ということで、シミュレーションでも確認した結果、T2 MOSアンプは(電流)ゲインも高く、そしてNFBもしっかりと掛かっており、帯域も広く、出力インピーダンスも合格ということでアンプとしての基本性能はOKである。と言えるでしょう。

なおCFBレギュレータはこのT2と兄弟ともいえる回路構成
(Rfが微小抵抗、Rsなし)によりシンプル、高性能を実現してます。
T2の兄はCFBレギュレータかな?


注;ここに出てきたモデルやT2回路、数式などは全てオリジナルです。ご心配な方、ご興味の有る方は検証よろしく。


2 件のコメント:

  1. 初めまして、ケンです。

    電流帰還、電流増幅のシミュレーションは珍しいので大変参考になりました。
    少し勉強をさせてもらいます。

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    1. ケンさん、コメントありがとうございます。
      今後とも、よろしくお願いします。

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