2015/04/19

新開発、CFB LDO レギュレータとは

初公開!! CFB(Current Feed Back)を使ったLDO(Low Drop Out)レギュレータです。

測定データから見ると良さそうでしょう!

ではこれと対極になるであろう電圧帰還のレギュレータはどんなものか。
説明用に教科書に出てくるような基本回路をLTーSPICEで作り比較しました。

(実機ではDAC電源で電圧帰還型のレギュレータキットを作りましたが、不満でした。それでこちらに手を出した。。。。。)

従来の電圧帰還レギュレータ





この回路で非安定化DC入力電圧は直列の制御トランジスタで制御され変動をレギュレートされて安定化された出力電圧となります。

動作は

1.出力電圧は帰還抵抗で分圧される。
2.ゼナーダイオードの作る基準電圧と帰還された電圧が比較される。
3.その誤差はQ4で増幅され制御トランジスタのゲートにエラー電圧として供給される。
4.ソースから出力電圧が供給される。









この回路の性能はループゲイン、出力電圧分圧比βとQ4の電圧ゲインAの積、Aβ、により決まります。 出力電圧変動、出力インピーダンスなどはループゲイン分の1に圧縮されます。
しかし、トランジスタ1段の増幅回路ですから、電圧ゲインはそう大きくは出来ず、さりとてゲインを上げる為に2段増幅にすると、位相補正のため高速化もしにくく、調和良く全体性能を上げることは難しいです。

このようなソース出力(バイポーラトランジスタならエミッタ出力)レギュレータの場合は制御トランジスタを動作させる為にゲート電圧を出力電圧よりも高くしなければならず、入力DC電圧をこの分かさ上げしなければなりません。 また、J5のような定電流負荷を使うとこの飽和電圧の分もこれにさらに加算されます。

ですから、高効率や大電流が求められる場合はこのタイプのレギュレータは敬遠されてます。

テツの考案したレギュレータはより高速動作が出来る、出力電圧を電流で帰還する電流帰還(CFB)であり、パワーアンプ終段でも使えるようLow Drop Out技術も同時に取り入れています。

CFB LDO レギュレータ

先ほどの回路との顕著な違いは

1.直列の制御トランジスタがコレクタ出力
2.誤差比較はベース接地回路でエミッタ入力。
  基準電圧と1:1で、
  誤差電圧検出は電流帰還。
3.制御トランジスタのゲートドライブ電圧が出力電圧よりも低い。

ここで
R13は配線や整流回路などのインピーダンス
R11は負荷抵抗。
I4はシミュレーション用電流源

この回路の動作は

非安定化DC入力電圧は直列の制御トランジスタで電圧変動をレギュレートされドレインより出力される。
この出力電圧はR17、電流帰還抵抗を介しベース接地Q5で
基準電圧と比較される。比較された誤差電流は
フォールデッド・カスコードJ4を経由して制御トランジスタM4のゲートに供給される。
R10に生じた電圧はM4で増幅されて出力電流になる。

つまり、負荷が重くなると出力電圧が下がり、Q5のコレクタ電流が減り、代わりにJ4の電流が増え、M4のゲート電圧が下がりドレイン出力電流を増やす。

制御トランジスタ、M4はP型MOSソース接地なのでゲートドライブ電圧を下げて出力電流を増やします、そのドライブ電圧レベルは出力電圧レベルよりも下、D7の電圧値近くまで下げれるので、出力に大電流を流させることが出来ます。

このように素子数は少なく動作もシンプルです。
ではどうやって性能を出しているのか?

このレギュレータは電圧変動率ではなく出力インピーダンスをできるだけ低くすることをデザイン・ゴールとしています。

このCFB LDOレギュレータの出力インピーダンスは電流帰還抵抗値のループ電流増幅ゲイン分の1になります。

Q5のベース接地入力インピーダンスと電流帰還抵抗の和(Ze(Q5)+R5)を
制御トランジスタM4での電流増幅率(R10xGm(M4))で割ることにより求まり、
この図での概算では6/2000--.>3mΩ程度になります。

初段ベース接地、フォールデッド・カスコードの動作電流はR12で決まりますが、この値を小さく、電流を大きくすると初段ベース接地の動作電流が増えコレクタ電流に反比例する入力インピーダンスを下げることが出来ます。(負帰還ループの中ではコレクタ側から電流を注入できる)
小電流高速用CFB LDOでは電流帰還抵抗を外しますが、同時にこの抵抗値を下げて初段入力インピーダンスを小さくします。

増幅帰還系の安定性ですが、Q5はベース接地、J4はゲート接地であり、これらが作るポールの位置は超高域にありますので通常は考慮する必要はありません。
ドミナントポールはR10と制御トランジスタの入力キャパシタンスCgsが作るもの、一個となるので、安定に動作します。

出力コンデンサの選定は負帰還安定性確保の為、ESRや容量の決定が難しいのですがOSコンのような低ESRコンデンサを付けても安定であり、むしろ広帯域の低インピーダンスの為に大容量のOSコンを使っています。

入力電圧の変動の抑圧(PSRR;Power Supply Rejection Ratio)を強化する為に、基準電圧源を様々な変動からガードしています。このゼナーダイオードへ流す電流は最も変動の少ない所、つまりレギュレータ出力から供給するようにしており、R14経由定電流で行ってます。
(電流値 Vbe/R14)

一方、基準電圧の電源を安定化出力からもらうようにすると、起動時には、安定化出力に電圧が出ていないので基準電圧を発生させられない。基準電圧が出ないので安定化出力も出ないとなって鶏と卵の関係で固まってしまいます。 
これを打ち破るのがJ4の接合型FETです。JFETはデプリーション型なのでゼロバイアスでもドレイン電流が流せ、起動時に制御トランジスタに電流を供給して出力電圧を上げていくことが出来ます。

ではシミュレーションではこれら2種類のレギュレータがどのような特性になるか見てみましょう。

シミュレーション回路と方法


安定化出力電圧 20V、最大出力電流5A、100W負荷 程度を想定してます。

シミュレーションはLT-SPICEで旧型とCFB LDOを同時にテストします。
入力電圧は共通、給電ラインのインピーダンスは0.5Ωと見て、回路にいれてます。
負荷は電流源で、各レギュレータごとに設定の値を変更するのは面倒なので一箇所だけを設定し他はF電流源でコピーさせてます。
出力制御のMOSFETはレギュレータの特性に大きな影響を及ぼします。

国産のMOS FETマクロモデルがあるといいのですが無いので、同等の性能であろうLTーSPICE付属のモデルを適当にピックアップしてます。

入出力特性


この測定では給電系統の電圧降下は0としてます。
CFB LDOレギュレータは入力と出力の差が小さく、2.5A負荷で350mVのドロップアウト電圧となっています。旧型は最低で2Vも程度あり、肩が丸くなっているので平常運転になるには3~4V程度が必要です。
このドロップアウト電圧はMOSFETの場合、飽和抵抗、On抵抗でのドロップなので、飽和電圧の低いMOSFETを選定すれば下げられます。

PSRR 特性


入力DCに乗っているAC成分(ノイズ)をどのくらい落とせるかですが、CFB LDOレギュレータは低域でー100dbを超えています。300Hz辺りから効き目が弱まりますが出力コンデンサの協力もあり高域で-40dbをキープしています。

出力インピーダンス特性



このシミュレーションでは負荷にAC 1Aの電流源をつないで出力の電圧を見ています。
CFB LDOレギュレータは低域で3.5mΩ、高域では出力コンデンサのESRの値10mΩになってます。
旧型レギュレータでは低域0.1mΩと非常に良い値になってます。高域は出力コンデンサのESRで決まりますので実際には良くても10mΩ程度にまで上がります。

トランジェント特性


シミュレーションではパルスの電流源(0-2.5A、1KHz方形波、立上がり立下り10uS)
を出力に入れてます。CFB LDOレギュレータがよさそうに見えるのはインピーダンス特性が旧型よりもフラットになっているからであってヒゲの大きさは出力コンデンサの特性で決まります。
ヒゲを除いた部分はテスト信号周波数(1KHz)での出力インピーダンスで決まります。

応用

CFB LDOレギュレータはこれまでテツのCDプレーヤ、SEPPパワーアンプ 出力段、真空管ヒータの直流点火用DCレギュレータ、SITヘッドフォンアンプのスイッチング電源後置レギュレータに組み込んでいます。

CDプレーヤ用の場合、+5Vデジタル電源、+5Vアナログ電源に組み込み済み。制御トランジスタはバイポーラ1個のみ、電流帰還抵抗は無しにして出力インピーダンスの低下と、広帯域化を狙ってます。基準電圧はLEDです。

パワーアンプ組み込み済みの物は開発初期なので大きめのサイズになってますがほぼ同じ回路で、正負のレギュレータで過電流保護とシャットダウン回路を備えてます。

真空管ヒーター用レギュレータも通常の3端子レギュレータだと電圧不足で6.3V巻き線が使えないので重宝しました。

SITヘッドホンアンプのレギュレータは15V 600mA定格でこのシミュレーション回路とほぼ同じです。スイッチングレギュレータ出力はリップル電圧が低く周波数が高いので、制御MOSFETには低入力容量のものを使い広帯域のノイズサプレスを狙いました。

真空管用B電源レギュレータに展開するのも、高圧を抵抗や直列ゼナーダイオードで負担するので
より高性能な低圧半導体が使え、容易に出来るのではと思ってます。
いずれ実験してみるかも。


感想;
CFB LDOレギュレータは高速な電流帰還を使い、高電圧、大電流でも低インピーダンスと低ノイズが実現できるので色々なところで使えるのではないかと思ってます。
昔、何十年も前の卒業研究でレギュレータを取り上げたのを思い出しました。あまりうまくいかなかった記憶があります。これでリベンジになるのかな。。。。
歴史はめぐりまたレギュレータを研究してるとは不思議です。

次回はCIRCLOTRONアンプ用CFB LDOレギュレータ実機について説明します。

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